【不屈な父親奮闘記】第13話「専属カメラマン」

オリジナルマンガ

ある休日の朝。
父は珍しく上機嫌だった。

「たまには家族みんなで思い出を作ろう!」

首から新しく買ったカメラを下げ、どこか誇らしげな表情をしている。
今日は話題の観光スポットへ家族で出かける予定なのだ。

普段は家族サービスが空回りしがちな父だが、今日は違う。
新しいシャツも着て、準備は万端。

「よし、今日はいい写真をいっぱい撮るぞ!」

そう意気込んで出発した父だったが――
現地に到着してわずか数分で、状況は思わぬ方向へ転がり始める。

「パパ、ここ映えるから撮って!」

噴水の前でポーズを決める母と娘。
父は慌ててカメラを構える。

「はい、チーズ!」

シャッターを切る。

しかし撮影はそれで終わらなかった。

「あ、もう一枚!」
「今度は横で!」
「こっちの角度の方が良くない?」

次から次へと飛んでくる注文。
父は大量の荷物を抱えながら、必死にカメラのシャッターを押し続ける。

気がつけば、母と娘の写真は何十枚にもなっていた。

そして父は、ふと遠慮がちに言う。

「じゃあ……次はパパも一緒に――」

しかしその言葉は、最後まで続かなかった。

「あっ、パパごめん!」

母と娘は突然、カフェの方を指差す。

「カフェ並ばなきゃ!」

そして二人はさっと走り去ってしまう。

その場に残されたのは――
カメラを持った父と、大量の荷物。

結局父は、荷物番と列並び係として時間を過ごすことになった。

そして帰りの車の中。

後部座席では、母と娘がスマートフォンを見ながら盛り上がっている。

「今日楽しかったね!」
「写真めっちゃいい!」

そのアルバムには、楽しそうに笑う母と娘の写真がずらりと並んでいた。

しかし――

どの写真にも父の姿は一枚もない。

バックミラー越しにそれを見た父は、静かに目を細める。

その時、後部座席から明るい声が聞こえた。

「パパ写真うまいね!
次もお願い!」

父は一瞬だけ遠くを見つめ、そして小さくうなずく。

「……ああ、任せてくれ。」

こうして父はまた一つ、
家族の思い出の裏側で静かに役目を果たすのであった。

今日もまたこの家では、
父の姿のないアルバムが、少しずつ増えていくのである。