【不屈な父親奮闘記】第17話「クレーンゲームの王様」

オリジナルマンガ

【今回の見どころ】

今回のテーマは、「娘のヒーローになりたい父の意地」です。

ゲームセンターで、大きなぬいぐるみに目を輝かせる娘。

その姿を見た父は、昔の栄光(?)を思い出し、

「パパに任せろ!昔はゲーセンの虎と呼ばれた男だ!」

と、自信満々にクレーンゲームへ挑みます。

ところが、狙っても狙っても景品は取れず、100円玉だけが次々と消えていく展開に。

「次こそは!」

と意地になればなるほど、財布は軽くなり、娘の視線も少しずつ冷静になっていきます。

そんな空気を変えたのは、お母さん。

「ちょっと貸して。」

その一言で交代すると、あっさり一回でぬいぐるみをゲット!

「ママすごい!」

という娘の満面の笑顔と対照的に、少し離れた場所で肩を落とす父の姿が何とも切なく、それでいて思わず笑ってしまいます。

家族を喜ばせようと頑張った結果、自分のプライドだけがクレーンに持ち上げられてしまう――。

そんな父の”あるある”が詰まった、笑いと哀愁あふれる一話です。

【本文】

休日、家族でショッピングモールへ出かけた父。
買い物を終えた帰り道、ふと立ち寄ったゲームセンターで、娘の視線がある場所に釘付けになっているのに気づく。

その先にあったのは――
クレーンゲームの中に並ぶ、大きなぬいぐるみだった。

娘はガラス越しにそれを見つめながら、ぽつりとつぶやく。

「かわいい……」

その姿を見た瞬間、父の中で何かが燃え上がった。

「よし、パパに任せろ!」

父は胸を張って宣言する。

「昔はな、ゲーセンの虎って呼ばれた男だ!」

娘は少し疑わしそうな目で父を見る。

「……本当かな」

しかし父は自信満々で100円玉を投入する。
クレーンがゆっくりと降りていく。

「よし……ここだ!」

だが――

「スカッ」

アームはぬいぐるみに触れただけで、虚しく空をつかんだ。

父は眉をひそめる。

「おかしいな……次こそは!」

もう一枚、100円玉を投入。

だが結果は同じだった。

それでも父は止まらない。
意地になり、次々とコインを投入していく。

「グググ……!」

気づけば財布の中の100円玉はどんどん減っていた。

その横で、娘はすっかり飽きた様子でスマートフォンを触り始めている。

「まだやるの?」

父は汗を拭いながら答える。

「次で取れる……!」

しかしその時、母がそっと言った。

「ちょっと貸して。」

母はコントローラーを握ると、クレーンをゆっくり動かす。

そして――

「カシッ」

ぬいぐるみが見事につかまれた。

「ウィーン……」

そのまま景品口へ落下。

「あ、取れた!」

あまりにも簡単な結果に、父は呆然と立ち尽くす。

娘は満面の笑みで叫ぶ。

「ママすごい!」

帰り道。

母と娘は楽しそうにぬいぐるみを抱えて歩いている。

その数メートル後ろを、父がトボトボと歩いていた。

手には、母が取った巨大なピンクのぬいぐるみ。
そして財布は、すっかり軽くなっていた。

父は空を見上げながら、小さくつぶやく。

「……俺の威厳が……」

こうして父はまた一つ、
家庭内ヒエラルキーの厳しさを思い知らされるのだった。

今日もまたこの家では、
父の小さなプライドが静かにクレーンに持ち上げられ、
そして落とされていくのである。

【作者コメント】

クレーンゲームには、不思議な魅力があります。

「次こそ取れる。」

そう思って100円玉を入れ続けた経験がある方も多いのではないでしょうか。

今回のお父さんも、娘を喜ばせたい一心で挑戦しました。

途中からは景品よりも、「ここでやめたら父として負けた気がする」という意地との戦いになっていたのかもしれません。

そして最後に、あっさり成功してしまうお母さん。

悔しいはずなのに、娘が嬉しそうにぬいぐるみを抱きしめる姿を見ると、「まあ、結果オーライか」と思ってしまうのも、お父さんらしいところです。

『不屈な父親奮闘記』のお父さんは、いつも少し空回りします。

それでも家族の笑顔のためなら、何度でも挑戦する。

その不器用でまっすぐな姿こそ、この作品で一番描きたい部分です。

クレーンゲームで熱くなった経験のある方も、お子さんのために頑張った思い出がある方も、このお父さんに少し共感しながら、クスッと笑っていただけたら嬉しいです。